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この記事はⅣのつづき。
パークはオープンし、相変わらず私は、マスコットとダンサーの掛け持ちをしながら誰より働いてた。
マスコットキャラを演じること自体は楽しかった。大人気のキャラクターに自分がなり切ることで、子供達が笑顔になる瞬間に立ち会える。
私たちを発見して、笑顔で走ってくる子供達。
パフォーマーとして、お客さんの笑顔が見られるのは、一番の醍醐味。
オーストラリアでストリートパフォーマンスをした時も、白人黒人大人も子供も、みんな一緒に踊ったんだ。泣けた。
これだと思った。
これが私がやりたい世界平和なんだ。
だから、人種も年齢も超えて愛されるキャラを演じてみんなで踊ることは、世界が笑顔で繋がる方法としては適っていた。
ただ、問題は会社のやり方にあった。
シフトの組まれ方がめちゃくちゃで、長時間、毎日マスコットをやるような人もいれば、付き添いのキャストだけをやる人もいて。
明らかに一部のパフォーマー達の身体には、負担でしかない。
外の気温は40度、重いマスコットを被って踊ったりする中で体調を崩したり、身体にも痛みが走ったり、限界を感じてた。
相変わらず白人は、毎日どころか全く仕事はなくても給料は7倍も高い。
オーディションで認めてもらえれば、パフォーマーのグレードを上げてもらえると思ってた。仕事が増える分、給料は無理でもせめて待遇は変えてもらえるだろうと。
インド人とのシェアにも手洗いの衣装にも痺れを切らしてた。
でも、オーディション後もグレードは変わることはなく・・・。
それどころか、私やマスコットキャラへの不平等加減はますます悪化してた。
みんなで抗議しようと言う声が上がる。当たり前だ。
私も正直ストレスが溜まりまくっていたので、みんなでも個人でも話し合いをしに行こうと意気込んでいた。
しかし。
マスコットキャラの子達は、フィリピンやインド、モロッコ、エジプト、アフリカなど、国では仕事がなく、お金を稼ぐためにわざわざドバイに出稼ぎにきている子達。
いくら給料が低いと言っても、彼らにとっては、自国に帰れば大金だ。
兄弟がたくさんいて、家族に仕送りしている子達もたくさんいた。
だから、どんなに条件が悪くても、身体がきつくても、国に返されたくないから、何も言いたくないと言う。
あんなに怒っていたのに。辛いと泣いていたのに。
私はすごく悔しかった。
この会社はそういうことをわかっていて、配役や仕事の内容を変えている。
これが社会の縮図なのか?
・・・それでも声を上げないと、どの道続く訳がない!抗議するべきだ!と思った。
でも、同時に、彼らの環境や生まれ育った国、価値観、生活を考えた。
悔しい。けれど、家族や守りたい人たちがいる彼らの思いを尊重するしかなかった。
私は?私は日本で生まれ育って、特に守るものも、お金が一番大事と言う価値観も持ち合わせていない。
給料が低いのはわかっていて、経験重視でここまで来たんだ。
私にとってはなにが大事で、なにを優先して、どこまで頑張ればいいんだろう。
オーディションでは、ダンサーとしてショーのディレクターに認めてもらえた。
オープニングダンサーの役も、なんとか死守してやり切った。
でも、ディレクターのボスであるプロデューサーには、実力の前に壁がある。
それでも、STEP UPのショーが素晴らしかったら、私は舞台に立つために、負けずに頑張れると思った。
でも、実際のショーを見たあとの感想は・・・残念で、悲しくなるものだった。
ダンサーもシンガーも照明も音楽も、みんな舞台上で死んでいる。フェイクだ。
きつくても、マスコットとして子供達と踊っている方が、人を幸せにするエンターテイメントに貢献してる。自分の生き方の信念に合っている。
もちろんショーの感想は、私の中だけのもの。
でも、あのショーに出るためのオーディションや修行があり、あのステージがパフォーマーとして最高地位でゴールだとしたら・・・私には全く魅力が感じられなかった。
確かにお金は稼げると思う。最高地位でいいホテルに住んで、パフォーマーなら誰もが憧れるステージに立つことは気持ちがいいはず。
だけど、このショー自体に、感動がなにもない。
急に全てが色褪せて見えた。
ドバイの世界一高いビルも、広すぎるデパートに高級品、人工スキー場に人工ライトショー、UAE最大のテーマパーク、煌びやかな経歴、美人で欠点のないブロンドパフォーマー。
みんなフェイクじゃないか。
私の心は、疲れてた。もちろん1人で抗議しに行った。
みんなが行かないなら、1人で戦ってやる。
失うものがなにもない私は、クビにされたって構うもんか。
私と、みんなの身体がボロボロになる前に、おかしいことはおかしいと言わなきゃ。
しかし、聞き入れてもらえるはずもなく。
怒りの感情には、怒りしか返って来なかった。
それからは、私への対応やシフトがますます悪化していった。
なんのための経験なんだろう。
辛いことを耐えるため?この会社に認めてもらうため?
もちろん、辛いことなんてあるに決まってる。
でも、耐えるべき境界線を見極めることは必要で、耐えた先の希望がなければ意味がない。
耐えるだけの経験なら、今まで日本でだってしてきた。
今ここで、ドバイに来てまで、身体を壊してこの先踊れなくなったら?
年齢的にも、この仕事が、パフォーマーとして立てる最後の舞台になったら?
私はこの仕事を無理に続けたことを絶対に後悔するだろう。
会社に認めてもらって、それで?STEP UPに出てお金をもらって、私は幸せなんだろうか。
明らかに差別があるこの会社のシステムの中で上に行っても、私が目指す世界の平和や自分の幸せに繋がることになるんだろうか。・・・頑張るべきステージは、ここじゃない。
散々考えて、私はついに辞める決意をした。
自分の身体の健康と、心に従って、ここにいるべきじゃないと自身で判断した。
もちろん周りには、なんで?と言われた。次の契約まで待てば、あのSTEP UPに出れてお金がたくさんもらえるじゃん!と。
確かにそうだ。もっと頑張れたかもしれないし変えられたことがあったかもしれない。
でも、彼らには彼らの価値観と優先順位があるように、私には、私の価値観と人生において譲れないことがある。
身体と心が死んだら、生きてる意味がない。
ただ、私を認めてくれたのはディレクターだけじゃなく、他のパフォーマー仲間にもいた。
彼らは私のビデオを見て、豪華客船ダンサーの仕事を薦めてくれた。君ならいけるよ、と。
私も、ここでキリキリすり減っていくより、他のことだって出来そうな自分に希望を持ってた。
お別れは突然に。まさかのクリスマス前日。
逃げるように帰っていく私を、たくさんの友達が見送ってくれた。
世界中から集まって、一緒に生活して仕事をして、いろんな苦楽を共にしてきた仲間達。
彼らには、どんな時でも明るく前向きでいることを学んだ。
大声で笑って、どんな時も楽しく、在る。
きついこともあったけど。
彼らのお陰で、楽しい時間も、嬉しかったことも、たくさんたくさんあったんだ。
4ヶ月間、このドバイで学びながら、自分なりに精一杯やってきた。
この世界のシステムに触れた気がした。
変えられること、変えられないこと。
それぞれ違った人間の、生まれ育った環境。目的。
私は、ダンサーとして、世界を相手にどこまでいけるのか。
自分がなにに幸せを感じて、なにが許せなくて、なにを目的としているのか。
やめることが正解かはわからない。後悔するかもしれないし、しないかもしれない。
ただ、自分で決めたことには、自分で責任を持つ。
誰のせいでもない、どっちに転んでも、自分で決めたことだ。
自分で、未来の自分を幸せにするんだ。
きっと、大丈夫。
バイバイ、ドバイ。
ありがとう。
もう来ることはないかもしれないけど、またね。
みんな、元気でね。
ドバイ日記FIN
読んでくださってありがとうございます。
最後に1つだけ。
今、差別問題が大きくなっているけど、私が少し経験して見てきたことの感想。
もちろん同じではないけど、1つだけ確かなのは、怒りの感情で戦っても、なにも生まれないということ。
世界の平和に必要なのは、対立することじゃない。
戦うことじゃないと思うんだ・・・。
じゃぁ、なんだろうね?
経験して、考えて、実験してきた私は、少しづつだけど、理想がわかってきたように思います。
だから、動かなきゃね。
世界が平和でありますように・・・⭐️
Kana
